さよならさえも言えなくて
家に帰ってからもなんだか落ち着かなくて、夢を見ている様なそんな感覚だった。

“少し”って彼は言ったけど、少しは1日でもあり1週間でもあり1ヶ月でもあり、もしかしたら一生でもあるのかもしれない。


そう思っていたけど、彼の“少し”は一生でも1ヶ月でも1週間でも1日でもなかった。






あれから4時間が経った頃。
突然携帯が鳴り出して、びっくりして目を開けた。
目の前のやりかけの課題を見て、途中で寝てしまった事に気付く。


机の上には教科書やらレポート用紙やらが散乱していて、思わず溜め息が漏れる。
あたしは携帯の受信音によって目を覚ましたのを思い出し、教科書の上に置かれた携帯を手に取り開いた。


『新着メール 1件』


どうせ美紘だと思ったあたしは、名前も見ずにメールを開いた。
課題が出た日の夜は大抵、いや、いつもと言っていい程美紘から『明日課題写させて!』といったメールが来るのだ。


でもそのメールの内容は“写させて”という内容ではなく、美紘からのメールでもなかった。
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