さよならさえも言えなくて
自然と足取りが軽くなる。
正直、不安だった。
巧海は記念日について何も触れて来なかったから、もしかしたら忘れているのではないか、そんな事を考えていたのだ。


「じゃあ妃芽、またな」


電車に揺られる事10分、あたしが降りる駅へと電車が到着する。


「うん。また明日」


あたしが電車から降りると、大きな音をたてて電車のドアが閉まった。
巧海は吊り革に掴まりながら、笑顔で手を振っている。
あたしも笑顔で手を振った。

巧海が見えなくなった後も、あたしの中には温かいものが残っていた。


大好き。


心の中でそう呟く。
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