さよならさえも言えなくて

自然科学研究部

「やっちゃっ……」


続きを言う前に、口を手で塞がれた。


「ちょっと声でかい!」


「あ……ごめん。
でも美羽、まじで?」


あたしがさっきより音量を下げて聞くと、美羽の頬がポッと紅くなる。


「……うん」


そう言う美羽がいつもより大人っぽく感じられた。

と同時に、自分が凄く幼く感じられた。

たった数日の間に、美羽は別人になった気がする。

見た目は特に変わっていない。
態度も話し方も変わっていない。

だけど、あたしの目に映る美羽はやっぱり何処か違くて、
今までとは雰囲気が違うというか、自分より大人に感じられるのだ。


それはきっと、美羽がまたひとつ大人の階段を上ったからだと思うけど、ここまで違って見えるとは思っていなかった。
なんだか自分だけ取り残された気さえする。


「ひぃはどうなの?」


突然自分でも気にしている事を聞かれて、言葉が浮かんで来なかった。


「あ……でも人によってかかる時間は違うし、気にしなくていいと思うよ」


そんなあたしの様子を察してか、美羽はそう付け足した。
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