さよならさえも言えなくて
7月17日、あたしたちが付き合い始めてから半年になる。

今から半年前、あたしは巧海に告白したのだ。
告白と言っても、ドラマや漫画にある様なロマンチックなものじゃない。


高校に入学して2ヶ月程経った頃だった。

巧海とは中学校も違うし、それまで同じ学校に『椎名巧海』という人物がいる事自体知らなかった。

だけど、たまたま廊下を歩いていた時、あたしは見てしまったのだ。


巧海の笑顔。
目尻が少し下がり、キラキラとした笑顔を見せる巧海。
凄く優しそうで、眩しくて。

あたしは今まで一目惚れなんてした事はなかったし、一目惚れなんてする事はないと思っていた。
一目惚れなんて、結局顔が好きって事じゃないか、そう思っていたけど、それは間違なく一目惚れだった。

顔が好き。
そう言われれば否定は出来ないけれど、あたしは何処か彼の顔ではない違う所に惹かれた様な気がする。

それ以来巧海を見付けると自然と目で追うようになった。

だけどクラスも違ったし、接点なんて全くなかったから、あたしはただ見つめるだけの毎日を過ごしていた。

ただ、噂だけは耳にしていた。

巧海には彼女が居ない事。
中学校は吉峰中学校だった事。
性格は優しくて、 皆に好かれている事。
結構女子からの評判が良いという事。
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