さよならさえも言えなくて
不良達の溜まり場に連れて行かれて、カツアゲでもされるのだろうか。
それともパシリにされるのだろうか。


「はい、到着」


そんな事を考えているうちに、目的地へ着いてしまった。
そこは不良達の溜まり場……ではなく、部室棟2階の1番奥の部屋の前だった。


「自然……科学研究部……?」


ドアの上に書かれている部活名には、聞き覚えがなかった。
こんな部活、前からこの学校にあったっけ……と疑問に思っていると、隣に居た田中があたしの疑問を直ぐに解いた。


「知らないと思うよ。
だって1週間前に出来たばっかりだし」


「あ、そうなんだ……。
で、ここに何か用があるの?」


「俺ここの部員なんだけど……まぁ入れば分かるよ」


田中はそう言って、ドアノブを回す。

一体彼は何を考えているのだろう。
あたしは不安に感じながらも、ドアの奥へと焦点を合わせる。
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