さよならさえも言えなくて
そこは、やはり不良の溜まり場だった。

髪が金髪の人、耳に大きなピアスを付けた人、どぎつい化粧をしている人、いずれも学校内でかなり目立っている人達だ。
その迫力ある集団が一斉にこちらへ視線を注いでいる。


「新入部員、連れて来た!」

田中がそう言うと、不良達は意外にも笑顔で迎え入れてくれた。


「まじで?よろしく!」


「え、あの……」


いきなりの出来事にあたしは戸惑いを隠せない。
第一、この部活に入るなんて、一言も言っていない。


「その子困ってんじゃん。
本当に入ってくれるの?」


すると茶髪の男の人が、あたしにそう問い掛けて来た。
落ち着いたその言葉に、あたしは少し落ち着きを取り戻す。


「いや、……そんな事言ってないです……」


「やっぱりな。
隼斗は人の話聞かないからさー」


追い出されるかと思いきや、その人は田中を責めてあたしに「ごめんね」と謝って来た。
見た目とのギャップに、あたしは驚きを隠せなかった。
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