さよならさえも言えなくて
答えながらも、あたしはまた昨日の帰り道の出来事を思い出していた。思い出しては後悔の念があたしを襲う。


「そんな暗い顔して……また昨日の帰りの事考えてんの?」


美羽は半ば呆れた様な表情でそう問い掛けて来た。
あたしが静かに頷くと、美羽は『大丈夫だって!』とあたしの肩をポンッと叩く。


「ひぃはいっつもそういう事言わないし、逆に本音言えたんだから良かったじゃん!
喧嘩だって、初めてなんでしょ?喧嘩も時には必要だって」

「喧嘩……なのかなぁ。あたしはそんなつもりじゃなかったんだけど……」


あたしは怒っていた訳ではない。だけど今改めて考えてみれば、あの態度は怒っていた様にとれるのかもしれない。

巧海は無言だった。
だけどその無言があたしにとっては耐え難いものだった。
原因を作ったのはあたしなのだけれど。
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