さよならさえも言えなくて
ずっと、秘密にしておくつもりだった。


『妃芽ってさ……椎名の事好きでしょ』


ボロは出していないと自負していたが、1年の頃いつも一緒に居た美紘にはあっさりとバレてしまった。


『妃芽はすぐ顔に出るんだよねー。目、泳いでるし』


美紘は、あたしがいつも巧海に目線を送っている事に気付いていたのだ。

あたしは堪忍して美紘に正直に伝えた。

そして次の美紘の一言。


『アド知ってる人から教えてもらえば?』



美紘のこの一言で、あたしの恋は一気に進展した。


巧海のアドはすんなり知る事が出来た。
今までの自分が馬鹿に思える位。


文字を打ってから送信するまでに2時間程かかった。

正確にはその2時間の間、打っては消してという作業を繰り返していたのだけれど。


2時間かけて打ったメールは3分で返って来た。

“よろしくね”

それだけだったけど、嬉しくて何度も何度もそのメールを読み返した。
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