遠くて温かい
「ばれた?」

とぼけて笑う私を呆れた溜息をつき、がっくり肩を落とす駆…。

「…ばか」

「はぁ?…ばかって」

こんな時は普通私の徹夜の頑張りに

『ありがとう』

くらい言って感謝するんじゃないかと思うんだけど…。

なんせ世界で1000本限定の時計なのに…。

駆が好きなデザイナーが製作した時計。
一本10万もしたのに。

『ばか』

って何よ。

「ばかなんて言うなら返してよ」

駆の手から時計を取り返そうと伸ばした右手。
時計に届く寸前で、ひょいっとかわされた。
そして、かわりに私の手首を掴み、その胸に抱きよせた駆は、一瞬私を見つめてから

「勝手に無茶すんなよ。ちゃんと俺のもんになる前になんかあったらどうするんだよ」

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