Memory's Piece

ボソッと呟いて波狼を追ってボクは勢いよくビルから飛び降りる。

一度だけ空中で回転して勢いを殺し、危なげない動きで着地して尻尾と耳をピンッと立てる。

それを少し先で確認した波狼は疾風のごとく走り出す。

それを難無く追い掛けながら、ボクは周りの地理を頭に叩き込んでいった。

記憶力は悪い方じゃない。

ボクが方向音痴になるのは初めて行く場所だけ。

・・・・・ただ単に地図が読めないだけなんだ。

ある程度目印となるようなものを頭の中に焼き付けたボクは、疾走する波狼に追いついて目配せする。

『気づいてる?』

ボクの視線の意味を正確に読み取ったらしい波狼は僅かに首を縦に振った。

二つ・・・・いや、三つ?

突き刺さる視線は痛いほどで、殺気はこれっぽちも消されていない。

今日は馬鹿な獲物が多い日だと僅かに肩を竦めて、ボクは静かに立ち止まった。

同じように立ち止まった波狼は尻尾の毛を逆立てて隙を見せない動きで辺りを伺う。

相手は雑魚中の雑魚。

ボクが手を出すまでもないような相手だ。


「魅稀」


「うん。ボクいらないから波狼に全部あげる。」


「さんきゅー。この前カケラ取られたばっかだからちょうど欲しかったんだよね。」

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