Memory's Piece


「魅稀はさ。あんなんだから勘違いされやすいんだ。・・・・・ま、俺も最初勘違いしたクチなんだが。」


気を取り直して赤いヤツをブラッシングしてやりながら俺はぽつりぽつりと語りだした。

いきなりだったから頼兎も不思議そうだが気にしない。


「初めて会ったとき飄々としてて、誰に対しても高圧的な魅稀を見てさ、『あぁ、コイツは幸せに生きてきたんだろうな』なんて思っちゃったんだよな。『悩みなさそ』とかさ。」


その印象は180度間違った解釈だった訳だが。

馬鹿だったあの頃の自分を呪い殺してやりたいと思うような勘違いだ。


「・・・・・初めて三毛猫化を目の前で見たとき、正直かなりビビったよ。あの時は一回か二回ぐらいしか会ったこと無かった上に、相手は最強だと噂される妖猫のミケだったからな。そんな魅稀が俺に対して背中向けて、戦ってるなんてありえないだろ、フツー。しかもデカイ猫の姿で。それにあの時の俺、魅稀が大嫌いだったし。」


だからこそ忘れられない記憶になったんだ。

あの日のことは。

思い出してつい笑ってしまった俺に頼兎は「確かに」と小さく笑った。


「それから一緒にいるようになったんですか?」


笑いながら聞いてくる頼兎に俺は「うーん」と首を傾げた。

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