Memory's Piece
笑いすぎで出てきた涙を拭う俺に頼兎は拗ねたように唇を尖らせた。
それがさらにツボに入って爆笑する俺に頼兎は呆れた風に肩を竦める。
「波狼さんが笑い上戸なんて意外。」
と言う風に。
ちなみに言うと、この部屋でいま爆笑してるのは俺だけではない。
赤いヤツもしかりだ。
爆笑・・・・とは少し違う感じだが、いつもより口端が上がっててニヤついてる感じがする。
「悪い悪い。つい・・な。魅稀がいなくて良かったな。」
クスクス笑いながら言い訳して、俺は膝上のサフを撫でた。
俺以上に笑いのツボが浅い魅稀が今いたら頼兎に同情したくなる程に大爆笑していたことだろう。
ひーひー言いながら腹を抱えて、頼兎をからかいまくっている魅稀が容易に想像出来てまた笑いが零れそうになる。
いかんいかん。
これ以上笑ったらさすがに頼兎が可哀相だ。
ニヤつきそうになる表情筋に喝を入れて、気づかれないように顔を下に向けて数回深呼吸。
吸ってー
吐いてー
吸ってー
吐いてー
少し笑いの衝動が収まったところで顔を上げると、恨めしそうな視線を頼兎が俺に向けていた。
「あー・・・・・」
つい、目を逸らしてしまった。
すまん、頼兎。悪気はないんだ。
心の中で謝罪しつつ、俺は頼兎の恨めしそうな視線に気づかないふりをしてポケットから財布を出した。
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