Memory's Piece
頼兎が立ち尽くす理由をはかりかねて首を傾げていると、顎をフワフワな何かでぽんぽんと叩かれた。
視線を下に向けるとニヤニヤと笑いながら(これが通常の顔か?)サフが俺を見ていた。
サフは上から顔を見下ろすと若干の迫力があるんだなとふと思う。余談だが。
「あぁ、苦しかったか?」
スマンと腕を解いてやると、サフはフルフルと頭を振った。
乱れてしまった毛並みを手櫛でそっと整えてやって、「ありがとな」とサフに礼を言う。
魅稀がいなくなるとどうも俺はいろいろと考えすぎてしまうらしい。
破天荒なやつがいた方が俺も気が楽ってことなんだな。
ほんわりと笑ってサフを撫でていると復活したらしい頼兎が穴が開きそうな程の視線で俺とサフを見ながら悲鳴のような声をあげた。
「波狼さんがエロモ二号の毒牙に・・・・・!!!!」
・・・・ツッコミ所が多すぎて一瞬頭が停止する。
何かのショックから立ち直ったらしい頼兎が一番最初に発した言葉を一つ一つかみ砕くようにして理解しながら俺はとりあえず
「エロモ二号じゃなくてサファイアだ。頼兎。」
と訂正をいれてみる。
「あ、スミマセン」
思わずといったていで謝る頼兎に笑った俺は、床から立ち上がると頼兎の横を抜け寝室を出た。
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