Memory's Piece

しみじみと過去を思い出しながら、俺は正面に座る頼兎の顔をみた。

赤いヤツと何やら揉めている頼兎の瞳には小さな輝きが見えた・・・気がした。

きっと、瞳の中のあの輝きが魅稀を彼に引き寄せたんだろう。

負けていられない。と一瞬頭の中で考えて自問する。

何に??

さっきから頭の中が大混乱だ。

統一性の無い思考回路に自分でため息をつく。

こんなこと考えている場合ではない。真面目に頭を回さなければ。


「飛空(ひくう)、泳海(おうみ)。mono di tri tetra Αλλαγή。」


魅稀が残していったメモをボックスの中に大事にしまって、俺は愛刀を抜いて指を滑らせた。

飛空、泳海。それが俺の愛刀の愛称。もともとある名前とは別の、俺が付けたものだ。

あ、・・・・どうでもいいか。そんなこと。

微かに振動しながらその身を輝かせる愛刀に軽く唇を寄せながら、意味のわからないことをグルグルと考えている頭の中にほとほと呆れかえる。アホか、俺は。

集中しない俺に抗議するように一層光を強くした二刀に心の中で謝りつつ


「波狼さん??」


いぶかしそうにする頼兎に、シッと指を立てて黙らせてから首からネックレスを引きちぎり、耳に付けたリング状のピアスを外す。

金属系のものをつけていると、嫉妬して力を発揮してくれない困った娘たちなのだ。

身に着けていた金属系のものを全て外し、チンッ・・・と俺は愛刀を鞘に戻した。


「飛空、泳海。ハロウィンまで本気で頼むよ。」


そう、囁きながら。

なんてったって魅稀が戻ってくるまで、俺は全力で頼兎を守らなきゃいけないんだ。

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