Memory's Piece
『憎悪の紅蠍』
それが夕妃の二つ名。
読み方的には『ぞうおのべにかつ』。
・・・なんてけったいな名前だろうか。
そこら辺にいるプレイヤーから聞き出した情報に眉間に皺を寄せながら、ボクは小さく舌打ちした。
まさか『ここ』に今このタイミングでアイツが来るなんて。
予想していなかったかと言われると、100%来ると予想していたんだから予想は大当りだと言っていい。
それでも、いつ来るかなんてことはさすがにボクでも予測できない。
苛立ちと焦燥。あと怒り。
負の感情がぐるぐると身体を巡るのを理性で押さえ付けてボクは大きく首を振った。
アイツはしつこい。
執拗で馬鹿で阿呆で無知。
夕妃を一言で表現するなら、『何も知らないということを知らない自分大好き野郎』といったところか。
夕妃には自分の知っていることが全てだと。そして、それ以外の真実はどうでもいいと思っている節がある。
そんでもって、自分大好きなナルシスト野郎。
・・・・・・勿論、大っ嫌いなタイプだ。
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