Memory's Piece

猫スタイルから変えるべきじゃなかったかと今更ながらに後悔する。

無駄に多い露出は気にならないけど、羽と尻尾は頂けない。

サキュバスに見えなくてもここはサキュバス服に猫スタイルでも良かったかもしれない・・・・などなどどうでもいいことが頭を過ぎる。

まぁ、今更だけど。

ビルの上を飛ぶように駆けながら、ボクは視線をスッ・・・・と宙に滑らせた。

痛い程の視線を感じる。

それがどういう意味で注がれているのか、一体誰からの視線なのか分かった今は違う意味で苛立ってしょうがない。

アイツが向かって来ないのはアイツの都合であって、ボクには全くの無関係だ。

視線と気配を手繰って夕妃の位置を割り出したボクはそちらに向かって引き裂いてやろうかという誘惑にかられながらも、それを頭から追い出すようにして軽く頭を振った。

桃亜姉や頼兎は近い場所にいる今、無駄に心配をかけるわけにはいかない。

心配。

そんなの前までは考えたこともなかった。

浮かんだ言葉に自分で苦笑しつつボクは無意識に走らせていた足を止めて正面から視線を受け止めた。

『おかしな事をしたら容赦しない』

視線を受けた夕妃が笑ったように見えた。

だいぶ遠くにいるからよくは見えないけど、気配でなんとなく感じるそれは『嘲笑』。

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