Memory's Piece

不愉快だ。

神経を逆なでしてくれるその気配に一瞬殺気立つが、近くにある桃亜姉と頼兎の気配を感じてかろうじてボクその場に留まりつづけた。

観察に飽きたのかはたまたボクが反応したのに満足したのか、夕妃はふいっと視線を外し、ビルの陰へと消えていく。

見えなくなっても気配は感じる。

『いつも狙っているのよ』

と言われているようでかなり気分が悪い。

イライラする感情を持て余しながら、頼兎達のいる場所にたどり着いたボクは二人が座るベンチを発見し後ろからコッソリと近づく。

後ろから頼兎を殴り飛ばせばきっと気分がスカッとするに違いないと強引に考えながら。

気配を殺して、近づいていくと雑踏に紛れていた二人の話し声が耳に入ってきた。

「あの、魅稀と桃亜さんって、血が繋がってる姉妹なんすか?」


「え?」


「いや、・・・・・魅稀と桃亜さん、似てないような気がするんす」


.....余計なお世話だ。

言い訳じゃないけど、昔からボクもこんな性格だった訳じゃない。

人は簡単に変わる。変わってしまうものなのだ。

それにしてもつくづく失礼な頼兎の思考回路は驚く程に筒抜けだ。

どうせ、ボクのことを狡猾で残忍・・・・だとでも思っているんだろう。

間違ってないしむしろあってる。

そう思われるように振る舞っているんだから。

ま、楽しんでやってるから真実これがボクの本性なのかもしれないけど。

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