Memory's Piece

だけど頼兎に言われるのはなんかむかつく。

これはお仕置きが必要だろう。

踵落としを繰り出して回し蹴りの刑だ。

肺いっぱいに空気を取り込んで足を振り上げ、落とそうとしかけたところで桃亜姉がそこでぽつりと呟いた言葉に身体の機能が全て停止した。


「本当はね、私達、3人姉妹なの」


「えぇっ!?」


「私とみーちゃんは血の繋がってる姉妹なんだけど、後一人は……」


あまりにもタイムリーな会話に思考が追いつかず、振り上げた足が地面につく。


止めて。やめて。ヤメテ。

嫌だ。いやだ。イヤダ。


昔のことが頭の中をグルグルと回る。

暗い部屋。

知らない醜いオバサンとよく知っているハズの知らないオジサン。

熱をもつ身体。

迫る陰。

塞がれる口。

独りぼっちの大きな家。

「……桃亜姉、それ以上は言わないで」

血を吐くように桃亜姉の言葉を遮ると、弾かれたように二人がボクを振り返った。

桃亜姉は困ったような心配そうな目でボクを見る。

ボクがいるって分かっていたら桃亜姉はボクの前で昔の話は決してしようとはしなかっただろう。

分かってるんだ。

桃亜姉は、ボクが一緒にいる相手が大事で大切だから話そうとしたって。

桃亜姉はいつだってボクの為に動いてくれる。

ボクが嫌がってもそれがボクにとっての最善であると考えたら桃亜姉は裏でコッソリとやってしまうのだ。

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