Memory's Piece
ボクの視線の中に含まれる問い掛けを正確に読み取ったらしい波狼は小さく呟き、声にならないくらいの小声で「ごめん」と小さく囁いた。
何を謝っているのかなんとなく理解できない。
怒らせたことに対してか、秘密があることに対してかはたまたなにか疚しいことがあるのか。
真意が掴めずに眉間に皺を寄せてどうしようか考えているとドタバタ劇が終わったのか騒がしく言い合っていた頼兎といつのまにか現れていた南瓜頭は人混みの中に掻き消えていく。
頼兎が抵抗しているあたり、南瓜頭が強引に引っ張っていっているらしい。
「・・・・・・・・・・あれって、拉致?」
危険そうな雰囲気がただよっていないので助けようという気が起きない。
南瓜頭と知り合いらしいし放っておいていいのだろうかという意味も含めて小さく呟くと波狼は「犯罪っぽいよな。女装少年誘拐?」と、苦笑した。
優しげな苦笑とこの喋りかた。
いまさっきのボクのぶちギレをなかったことにしようとしているのだと気付いてボクは遠慮なく笑わせて貰った。
あれは波狼にとっては理不尽な怒りだったのだから波狼が怒っても仕方がないのに、波狼はいつものようにボクに軽口を叩いてくる。
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