Memory's Piece
誰に会おうと波狼の自由だ。
ボクが文句をつける権利なんてさらさら無い。
その相手が誰であろうと。
それが分かっていても、ついぶちギレてしまったのはボクが自分が思っている以上に波狼が大事だからだろう。
波狼もあと、多分頼兎も。
夕妃はボクにとって過去の罪の象徴。
ボクはあれは正当防衛だと思っているけど、でも負い目と罪悪感は少なからずある。
世間一般からすればあれは大罪だという自覚があるから。
何もかもを吹き飛ばそうと大爆笑するボクの背中を波狼はポンポンと軽く叩いてくる。
一時休戦の合図だ。
ボクなんかより大人な波狼に甘えさせてもらうことにして、ボクは「はぁ~ぁ」と笑いすぎて切れ切れになった呼吸の合間に大きく息をついた。
「ちょっと出かけてくる。波狼、桃亜姉を任せられる?」
「・・・・・魅稀?」
突然立ち上がったボクに怪訝そうにする波狼に苦笑してボクは軽く手を振って隠れた疑問を否定する。
「大丈夫。暴れたりしない。分かってるから、安心しなよ」
「・・・・・・・・・・・全部お見通しって訳か」
「まさか。信用してるだけだよ。波狼のことも頼兎のことも・・・・・・ね」
ふっ・・・・と目を細めてボクは小さく笑い、人混みの中に身を投じた。
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