Memory's Piece

昔から、こういう勘は外したことがない。


「なんだって?」


「・・・・・何でもない。ボク帰るわ。」


呟きを拾いきれなかったらしい波狼にクエスチョンマークを飛ばされたけどそれを無視してボクは店を出た。

背後で「何しに来たんだ?」と波狼が呟くのが聞こえたけどそれもスルー。

ボクは電柱を伝ってビルの屋上へと上がりオレンジに染まる街を見下ろした。

何かが来たと分かっていてもそれが良いモノなのか悪いモノなのかがボクには判別出来ないのだ。


「んー。ここで考えてても仕方ないし行ってみるかなぁ。」


この世界での暮らしかたや過ごしかたは誰よりも分かってる。

気配を探るなんて朝飯前だ。いまは夕時だから夕飯前?

それに新しくきたルーキーなんて気配ただ漏れ。


「いた。」


数分もしないうちに気配を探り当ててボクは、ふと首を傾げた。

知ってる気配だったからだ。

そう遠くない場所にある気配は何やら戸惑っていて不安定。

でも何か、決意みたいなしっかりしたものが奥底にちらついている感じだ。


「ふーん、ルーキーにしては良い気配だ。鍛えれば遊びがいのある玩具になるな。」

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