Memory's Piece
「魅稀、髪が乱れてるわよ。まったく、女の子なんだからちゃんとしなさい。」
「別にいいよ、そんなの。動きやすければ。」
「ダメダメ。せっかく綺麗な髪をしてるんだから。ほら、貸してみなさい。」
腰に手を当てて指摘する零一に、ボクはしょうがないなぁと適当に結んでいた髪を下ろした。
さらりと腰に垂れる髪に触れた零一は「傷だらけじゃない」とか「あぁっ!ここの長さが違う!!」とか言って勝手に憤慨している。
まったく、失礼なやつだ。
何処からか取り出した櫛とハサミで髪を調えていく零一に内心呆れつつ、ボクはこれからの事を考えていた。
多分、これから本格的に夕妃が絡んで来るだろう。
姿を見せたということはいろいろな準備が整ったということだから。
ボクの近くにいれば、確実に危ない。
でも、今更離れる事も出来ない。
夕妃のことだ。ボクに関しての調査は万全で完璧にしているはず。
頼兎や波狼はボクの身に代えても守る。
それがボクが巻き込んでしまった責任だ。
でも桃亜姉はまだ間に合う。
『あの場所』に連れていければマザーシステムがボクの願いを聞き入れてくれるから。
沢山の約束を破ることになってしまうけれど、でも、それでも桃亜姉には変えられない。
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