Memory's Piece
綺麗に髪を梳き直して、右側を高く結い上げてくれた零一は左側に取り掛かろうとしてふと顔を上げて
「―――――・・・・」
何かを呟いた。
「え、なに?」
耳元だったにも関わらず聞き取れない程の小さな呟きに思わず聞き返したら
「イケメンの香りよぉぉぉぉお!!」
と大絶叫されてしまった。
さっきの小声とは比べものにならないほどの大音量を、耳元で出された猫耳がペシャンっと潰れ、尻尾が垂れる。
頭がキーンとして耳がビリビリと痺れて、人一倍耳が良いボクにはかなりの苦痛だ。
そんな大きな声で叫ばなくったって聞こえてるよ!!
って叫べたかどうか。ボクにもわからない。
耳の痺れと頭痛に悶絶するボクにそんな余裕があったかどうか、果てしなく謎。
10秒か、はたまた10分か。
しばらく悶絶していたけど耳の痺れと頭痛が収まりはじめたのでボクが涙目で顔を上げると、そこに零一はいなかった。
びっくりだ。
予想通りすぎてびっくりだ。
放っておかれた左半分の髪が怒りで震えて鈴やかな音をたてる。
「に゙ゃぁぁぁああー!!もうっ!」
空に向かって大絶叫して、ボクは乱暴に左半分の髪を結い上げて零一を追った。
とりあえず殴って、文句の一つ二つや言ってやらないとと気が済まない。
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