Memory's Piece

―――――・・・


魅稀に案内されて入った領域は、このゲームの世界からは浮いた場所だった。

ただ静かで、清廉とした場所に思わず息を呑むと頬の横を一匹の蝶が撫でるように通りすぎて行った。

見たこともないような大きな揚羽蝶。

蝶は、いつの間にか眠ってしまっていた桃亜さんに寄り添うようにして魅稀の肩に舞い降りた。


「アゲハ。どこ行ってたの?」

蝶からの返事はなかったが魅稀は何処か責めるような目でアゲハと呼んだ蝶を見つめている。


「魅稀?」


「何でもない。こっち。」


一気に機嫌が悪くなったらしい魅稀は肩の蝶を払うと、桃亜さんを抱いたままスタスタと揺るぎなく歩いていく。

ホントに性別、女なのかしら。

とか私が言えないような疑問が頭を掠める。

一体どこにあんな力が?

苦笑しつつ、素直に魅稀に着いていくとすぐにそれは目についた。


「・・・?」


可愛らしい小屋の横にそびえ立つこの世界には似つかわしくない塔に思わず疑問符が飛ぶ。


「魅稀、あれは?」


「秘密。」


あまりにも簡潔に答えられて二の句のつぎようもない。


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