Memory's Piece
どうやら気が抜けて、頭のネジが一本緩んでいるらしい。
頼兎がいると調子が狂う。
内心臍を噛んで、ボクはさらりと落ちてきた髪を見た。
そういえば髪を下ろしたままにしてたんだ。
気合いをいれる意味でも、頭のネジを締める意味でも、髪は下ろしたままじゃいけない。
ガッと無造作に右側の髪を掴んで適当に結びだしたボクに
「ちょっと!!」
と零一が悲鳴を上げた。
慌ててボクの背後に回り込んでくると、ボクが結んだ髪を解いて何処からか櫛を取り出して結い直し始めた。
ボク以上に乙女なコイツは、適当に結ばれそうになった髪に悲鳴を上げたのだ。バカバカしい。
「む……。別に一人でももう出来るんだけど」
「駄目よ。アンタはいつも結び方がちぐはぐなんだから、大人しくなさい」
「…………むー」
昔は確かに桃亜姉や零一に結んで貰っていた。
一人になってからは自分でやっていたけど、二人のようには上手く結べなくて無性に寂しくなった事もあった。
今じゃ昔程下手じゃないしちゃんと結べるんだけど、零一からすればボクの結び方はじれったい程に下手くそらしい。
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