Memory's Piece

やっと自由になった尻尾がちゃんと機能しているかあらゆる方向に振って確認してると、頼兎がかーなーり怪訝そうにこちらを見つめていた。

あぁもう。また忘れてたよ。

さっきは零一、今度は頼兎。

どっちも存在感はありすぎる程だろうに、何故かたまにスコーンッとその存在がボクの中から抜け落ちるんだ。

零一も頼兎の視線に気が付いたのか「あら?忘れてたわ」とか呟いた。

どうやら、彼(彼女?)も頼兎の存在を忘れていたらしい。

何か話題を出そうと妙な頑張りをしてるらしい零一は咄嗟に


「ま、桃亜さんに結って貰うよりは上手くはないのだけれど、こんな感じでいいでしょ?」


とボクに話をふった。

瞬間、ボクの顔が強張る。

今、ここで桃亜姉の名前を出すのか。

………この馬鹿は。

さっきまでのほのぼの空気を消し去って殺気すら漂わせて零一を睨め付ける。

一瞬、ボクの雰囲気の変貌に驚いた風だった零一も、自分の言った言葉に気が付いたのか「しまった」と口を手で覆った。

でも覆ったところで出てしまった言葉は戻ってこない。

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