Memory's Piece

疑惑と少しの怒りを含んだ頼兎の視線がボクを責める。

どうして答えない?
どうして教えてくれない?

………そう、訴えてくる。

『黙れ!』と耳を塞いで、『煩い!』と叫んで、『目障りだ!』と目を瞑れればどんなに良いだろうか。

甘い甘い逃げという誘惑。

前だったらこんなこと思いもしなかったのに。

強く噛みすぎたからか切れた唇から血の味が口内に広がっていく。

黒くて汚い罪に穢れたボクの血の味。


「それは、僕が説明しよう」


突然響いた声にボクはバッと顔を上げた。

聞き慣れた耳慣れない声。

ずっと話を聞いていたのは分かっていたけど、まさか出てくるとは思いもしなかった。

頼兎の横に立つのはまだ幼さを抜けきれない少年。

堂々とした風情で立つその少年は、驚く頼兎を見てクスクスと笑うと、チラリとボクに軽く視線を投げてから

「ふふっ。僕と君は出逢うのは初めてかな?」


とまた笑う。


「え、あ、……はい」


「まぁ、無理もないさ。僕は今までこの場所に出てこれなかったからね」


「え?」


戸惑う頼兎とそれを面白そうに眺める少年を見てボクは愕然とした。

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