Memory's Piece
ありきたりな怪しいナンパみたいな台詞に自分で苦笑しつつ口を開きかけたところでボクは月夜見を召喚していた。
ただの条件反射だった。
死に神の気配が黒くなり、殺気を帯びたから咄嗟に召喚して身構えただけのこと。
結果、その対応が正しかったことを身をもってボクは知った訳だけど。
鎌を大きく振り下ろしてきたのを月夜見で受け止めて、ボクは小さく息を吐いた。
イラッとしたのは、相手の意図が見えなかったから。
初対面の、ましてやルーキーに恨まれるなんて身に覚えがさらさらない。
ルーキーじゃなければいろいろと思い当たる節もあるけど、今日始めたばかりのひよっ子がボクを知っている訳がない。
・・・ムカつくなぁ。
苛々しながら大鎌を受け止めていたら死に神が月夜見をごとボクを跳ね退けた。
ウェイトのない軽いこの体が腹立たしく思えた瞬間だ。
大鎌を構え直した死に神をムカムカしながら眺めつつボクは落ち着こうと、尻尾を大きく一振りした。
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