Memory's Piece
「僕は先程、特別な"呪い"がかかっていると言いましたね?」
「え、…………あ、はい」
「僕はある媒介と共に存在してはいけない存在なのです。
つまり僕がこの世界へ踏み入れれば、仮に…………Mとした媒介はこの世界に存在出来なくなるという事です」
そう。ナギサと「あの人」は朝と夜のような存在。
確実に存在してるのに、お互いが共に在ることは決してない。
「じ、じゃあ、その媒介のMってのがこの世界に存在したら、君は……ナギサ君は此処には存在出来ないって事か?」
「御名答。やはり君は聞いていた通り、頭の冴える人だ。
つまり、僕は今、此処に居る。媒介Mを犠牲にして。
そしてこの媒介Mと僕が同時に存在する事のないよう……」
「それ以上言って何にな……」
思わず口を挟んでしまったボクだったが、言葉が最後まで紡がれることはなかった。
プロテクタが壊され、入り込んできたからだ。
ボクの大嫌いな蠍の気配が。
尻尾と耳の毛が逆立ち、ピンッと立ち上がる。
纏わり付くようなねっとりとした気配は少しずつ近づいてきて、
その姿を現すと同時にニッコリと艶やかに嗤った。
「ご機嫌麗しゅう、お姉様方」
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