Memory's Piece


「僕は先程、特別な"呪い"がかかっていると言いましたね?」

「え、…………あ、はい」


「僕はある媒介と共に存在してはいけない存在なのです。
つまり僕がこの世界へ踏み入れれば、仮に…………Mとした媒介はこの世界に存在出来なくなるという事です」


そう。ナギサと「あの人」は朝と夜のような存在。

確実に存在してるのに、お互いが共に在ることは決してない。


「じ、じゃあ、その媒介のMってのがこの世界に存在したら、君は……ナギサ君は此処には存在出来ないって事か?」


「御名答。やはり君は聞いていた通り、頭の冴える人だ。
つまり、僕は今、此処に居る。媒介Mを犠牲にして。
そしてこの媒介Mと僕が同時に存在する事のないよう……」


「それ以上言って何にな……」

思わず口を挟んでしまったボクだったが、言葉が最後まで紡がれることはなかった。


プロテクタが壊され、入り込んできたからだ。



ボクの大嫌いな蠍の気配が。



尻尾と耳の毛が逆立ち、ピンッと立ち上がる。

纏わり付くようなねっとりとした気配は少しずつ近づいてきて、
その姿を現すと同時にニッコリと艶やかに嗤った。










「ご機嫌麗しゅう、お姉様方」






.
< 222 / 237 >

この作品をシェア

pagetop