Memory's Piece
零一の彗千を受け止めたのは見慣れた二ふりの刀。
翻るコートと優しい緑の髪が何故だか懐かしい。
だけど、いつもは優しい色を持った向日葵色の瞳が今は険しく歪められていた。
「波狼クン…………!?」
彗千を止められた零一が驚愕の声を上げても、表情一つ変えずに波狼はボクに鋭い視線を投げつけてくる。
嫌悪、恐怖、畏怖、そのどれとも違う表情を浮かべる瞳にボクが写る。
無表情で、何の色も持たないボクが。
「波狼クン、どきなさい!貴方、何をしてるのよ!!」
零一の怒声が平和だったはずの場所に響く。
それすらも無視して、波狼は彗千を弾き返すと後ろに退いて夕妃を守るようにして立つ。
一迅の風が吹き抜け、花びらが舞う。
「波狼さん、何やってんだよ!何でソイツに背中向けてんだよ!!」
頼兎が悲鳴に近い声すら波狼はスルーして、ボクを睨む。
…………これは流石に、笑えない。
「なに聞いた?」
「………全部」
ボクと波狼の間の会話はこれだけ。
でもすぐにわかった。
夕妃から全てを聞いたのだと。
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