Memory's Piece
「僕等は、結界を強化してくるよ」
「みーたん、あんまり気落ちしないでね」
ナギサとサナギがそう言い残して消えるのを視界の端で見送ったボクは深く溜息をつくと、バタンッと勢いよく後ろに倒れて、クルンと丸くなった。
なんだかもう疲れることが多過ぎて頭の中のメモリーディスクがキャパオーバーしそうだ。
「魅稀」
ボクが寝転んだ横に腰掛けた零一が慰めるようにボクの背中を叩く。
鬱陶しかったけど、それを払う気力すら湧かない。
頼兎も零一とは反対側のボクの隣にいわゆる体育座りをすると、波狼の名前を小さく呟いて顔を伏せた。
何も知らない頼兎にとっては激動の数時間だった事だろう。
ボクでさえ今は何もする気が起きないくらい無気力なのだから。
ここまでくると巻き込みたくないとか嫌われたくないとかいう悠長な事を言ってる暇はないのかも知れない。
もうビックリするくらい頼兎は当事者として夕妃にインプットされているはずだ。
「頼兎」
ボクはもう一度深く溜息をつくと、尻尾で地面をパタパタと叩きながら頼兎を呼んだ。
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