Memory's Piece
ビルとビルの合間を駆け抜けながら、魅稀はヒョンヒョンと尻尾を振った。
着慣れた黒いゴスロリチックな服に厚底のブーツ。
高く結い上げた髪は魅稀の動きに合わせて跳ね上がる。
ピョコンと突き出た猫耳と自在に動き回る三毛模様の尻尾はあまりにも愛らしい。
この一見、変人に見えなくもない格好が魅稀の通常スタイルだった。
現実の街中でこんな格好の人間がいたら(秋葉原以外の街でだ。)、好奇の目を向けられ、頭の中を疑われるに違いない。
まぁ、顔が恐ろしく整っているので似合っているといえば似合っているのだが。
そんなことを気にもしない(というより気にした事もない)魅稀は一見して動きづらそうな厚底ブーツを器用に操りながら、キョロキョロと辺りを見渡し、そのかわいらしい顔には似合わない不穏な笑みを浮かべた。
「目標はっけーん♪」
グッと足に力を込めて前身を傾け、にんまりと不敵に魅稀は微笑んだ。
待ち望んだ狩りの対象がそこにはいた。
.