Memory's Piece

「なに、また迷子なわけ?」


ボクが方向音痴だと唯一知る波狼は長い髪をバサッと揺らして、ニヤリと笑った。

やっとボクの言葉から立ち直ったらしく、直ぐさまカッコつけて立ち上がるところが何とも波狼らしい。


「迷子だけど何か?それだけじゃボクの魅力と強さは損なわれないから全く問題はないよ。それに、弱みに付け込もうとするのは大正解だけど波狼ごときがボクに立ち向かおうとするのはあまりにも無茶じゃないかな?何なら立ち向かってみる?瞬殺してあげるよ?」


「・・・・すんません。冗談です」


「よろしい。」


怒涛のように言い返すと、しょぼん・・・・と波狼の狼耳と尻尾が垂れ下がった。

うーん。分かりやすい。

態度に出やすい波狼にボクは心の中で笑いながら、


「波狼、なんでもいいからボクを訓練所に連れてけ。ミッションクリアの報告が出来ない。」


と全く違うことを口にした。


「はいはい。」


垂れていた耳と尻尾を立てて苦笑した波狼はビルからヒョイッと飛び降りた。

ビルの高さなどものともしないその波狼の動きにボクは少々感動を覚えた。

出会ったばかりの頃は怖がって飛び降りるのをあんなに嫌がってた高所恐怖症の波狼なのに。


「やりよるな。」


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