Memory's Piece
口に出すのもおぞましくて、俺はその先の言葉を呑みこんだ。
頼兎はそれでもちゃんと分かったらしく、醜いものを見た時のような顔をして黙り込む。
「多分、昔はあんなじゃなかったんだろうな・・・・・」
いっても詮無い事だとは分かってはいるが、やりきれない。
他人を信用しようとしないところも妙に暴力的なところもきっと下郎のせいだろう。
本来守ってくれるはずの親が、暴力をふるい、凌辱するなど幼い子供が心を壊すには十分すぎる環境だ。
「悪い事したな・・・。」
ポツリと深い後悔をにじませて呟く頼兎に俺は「謝らないほうがいい」と小さく囁いた。
「謝るということは、もう一度その話題に触れるということだ。本音をいうと、頭を下げたいところだが・・・・、それをするとまた魅稀の傷を抉ることになる。」
「そっすね・・・。」
どんよりと重い空気が部屋を包む。
謝ることで重い気持ちは普通は飛ぶのだが・・・・。
・・・謝ることが出来ないというのにはちょっと辛いものがある。
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