デスゲーム
「これじゃあ隼人が…」

「いいって。俺暑がりだから」


本当は低血圧で超寒がりだけど。我慢するか。


「感謝ばかりだよ。…ありがとう」


沙弥は上着を羽織り、両手で袖を握り締めた。しかし沙弥の具合は変わりそうになかった。


「体調崩す前にもう帰るか?」

「うん、そうする」


立ち上がり背伸びをし、沙弥の手をエスコートして立ち上がらせる。


「いけるか?」

「多分。靴紐解けちゃったから先行ってて」


しゃがみこみ、結び直す姿を後ろに歩き出す。数歩進み遠ざかるだけで足を止める。今の沙弥を放っておけないからだ。

だが、その心配は一瞬にして膨張した。空気が豹変してゆく。

なんだこれ…さっきまでの空気とは根本から違う。冷たく、微塵の温かさの侵入さえも許さず、まるで生命力をも切り刻むかのような空気に。

これ…おかしい。胸が苦しくて、息ができない。嫌な予感だけがしきりに募る。なんだよこれ…。





『時間だァ…』




何だ?低く、この世のものとは思えない程冷酷な声が聞こえた。

胸を抑え、掠れゆく視界の中、必死で意識を保とうとする。そうだ、そんな鈍い感覚で、俺以外にもここにいる人が頭に浮かんだ。


「くそ、なんだってんだよぉ。沙弥大丈夫か?……沙弥??」
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