デスゲーム
「弱くていいんだよ、隼人は。もう頑張るのやめよ」


沙弥が言ってくる。それを無視して熊のストラップを強く握る。


「………ぶねえ」

「あれ?先輩びびっちゃいました?」

「危ねえ。沙弥、ありがとな」


目の前の沙弥がキョトンとしている。


「おめえじゃねえよ。本物の沙弥の方だ。この空間は現実じゃないってこと、忘れてた」


俺を取り巻く四人が戸惑って言葉を発しない。強く立ち上がり背伸びする。


「あ~あ、やばかった。精神持ってかれそうだったわ。

このゲームは『パラサイト・マインド』。そう言って俺の心を蝕み、精神を殺すつもりだったんだろ?」

「なんだよ清水。いいから早く死……」

「死なねえ。沙弥と約束したんだ。強く生きるって。この沙弥は偽者だ。弱くていい?ふざけんな!」


ビクッと怯える。俺は偽者の沙弥の胸ぐらを力の限り掴む。

本当の沙弥はもっと強くて、優しくて、世話好きで。人を貶めることなんて考えすらしない、芯の通った心を持ってるんだ。


「隼人?…私だよ、沙弥だよ。どうしてこんなことするの?嫌いになってもいいの?」

「ああ嫌ってください。この偽者が…知ってた?沙弥ってなあ、いつも委員長バッチつけてんだよ」

「えっ、嘘?」

「嘘だよっ!」
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