デスゲーム
ドアを開けると、部屋の角でガタガタ震える柊がいた。何かをしきりに握っている。


「お嬢様、お怪我はありませんでしたか?何故泣いているんですか?」

「うるさい!!あっちいってください。出てって!」


柊は側にあったぬいぐるみを俺の顔面目掛け投げ付けた。それを軽くキャッチすると、静かに歩み寄る。


「逢いたいって言われたから逢いに来たのにその態度かよ。お姫様、ひどいですニャン♪」


グラサンを取り外してぬいぐるみを柊の目の前で揺さぶる。


「清水……君?」


スーツを脱ぎ捨てて、ぬいぐるみをベッドに投げる。柊は驚きを隠せていない。


「柊、何て顔してんだよ?初めて見るわ」

「清水君!!」


座ってたのにいきなり飛び付いてきた。やっと逢えた。今では懐かしい柊の香り。思わず笑顔が溢れる。


「柊分かったから離して、な?」

「嫌です!!清水君からもギュッてしてぇ」


背後から視線を感じる。背中が痛く、焼けるくらい鋭い視線を…。


「…分かったよ、これでいいか?」


ギュッと抱き返す。柊は嬉しそうに俺の腕の中で一度だけ頷いた。いつか感じた、この心地よい安心感。
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