デスゲーム
そう言い俺の手を無理にこじあけ、マスコットと共に握ってきた。だが包んだままのその手をひっくり返す。


「いいって。柊だから持ってて欲しいんだ。お前が……大切な人だから」


柊の顔が赤くなっていく。照れとも恥じとも違う、まるでときめいたように。


「私、今まで以上にこのマスコットは大切にします。それが沙弥さんのならなおさら」

「…俺な、マスコット渡す人は誰でもいいなんて思ってねえよ。俺にとって特別だから渡した。……覚えてるか?前にここに逃げ込んで、知り合った日の事」

「はい、今でも昨日のように覚えています。ここは私達の始まりの場所」


あの日とんだお姫様に捕まり逃げるハメに。まさかあのドタバタ姫とここまでになるとは思いもしなかった。


「ハハ、あのドームの遊具で身を潜めたよな。その後、笑ったり泣いたり色んな事が起こったよな」


柊は熊のマスコットを大切に鞄にしまうと、真っ直ぐに俺を見つめてきた。


「あの……私が特別って…その…つまり…」

「ん?こういうことだよ」


不意にグッと柊の肩を手繰り寄せる。そして…





キスをした。





柔らかくて甘くて優しくて、そんな不思議な感覚が俺の中を駆け巡る。
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