デスゲーム
「俺に彼女はいなくても、それに近い存在の人はいた。それが沙弥だった」


聞き入るようにして、時折心配そうに見つめてくる。何も言わずに、話しやすくしてくれてる。


「沙弥とは親密な関係になる事ができなかった。俺を『デスゲーム』の犠牲者にしたくなかったから。……俺が彼女の存在を拒む理由の一つはそこにあったのかもしれない。けど…」


今度は柊の瞳を真っ直ぐに見つめる。意思はできてる。迷いはない。


「柊と親密な関係になれば、『デスゲーム』に影響がでる。一方を失えば残された者の悲しみは想像を絶するだろうな。

でも俺は沙弥を失った時の悲しみを二度と起こさない。柊は絶対に守る。何があっても必ず」

「うん、信じてます」


いつもの優しい笑顔。この笑顔に幾度も安心させられた。愛しくも思える。決して…失いたくない。


「もう一ついいか?…今なら吹っ切れた。こんな俺で良かったら付き合ってくれ」


もやの正体は…沙弥への想い、か。どうしようもない想いが渦巻いてたんだな。

そんで彼女をつくれば沙弥と関係がなくなるような気がした。それが嫌で彼女を認めたくなかったんだ。
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