デスゲーム
何かはあるな。雫をどかして橘と正面で見合えるようにする。


「悪い、俺もお前達が悪者ではないって忘れてた。その話聞かせてくれないか?」

「ええ。中学の時、九条は部活の練習試合で白樺に来てたの。でね、その練習試合の学校で桜井さんに出会ったんだ」


橘はベンチに座り、手遊びをしながら話す。


「ボールを拾ってくれたのが偶然に桜井さんで、あいつ一目惚れしちゃったの。まあ高校は地元を選んだんだけどね。それだけで…そこで終わりのはずだった」

「沙弥とそんな繋がりが…。で、本当の笑顔って言うのは?」

「今から言うわ。その後二人は一度も会わなかった。九条は忘れようとしてて、でもできなかった。お互いの名前も知らないのにだよ。そこまで好きじゃないって言い張ってたけど」


交わらない二人か。沙弥は奥手だったから仕方ないな。九条の場合は、きっと心の隅で忘れられなかったんだな。


「んで、次に再開したのが皮肉にも『デスゲーム』だったということか」
< 292 / 638 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop