デスゲーム
雫は廊下で美人な方――お母さんに会うと、慌てて走って抱き締めた。溜めていた涙が、一気に流れる。


「お母さん私…私ッ…」

「ごめん、私がついていながら。お父さんを許してあげて。雫に幸せになって欲しいだけなのよ」


俺が出る幕じゃねえな。外へ出ようとすると、後ろから声がした。


「あの、雫をお願いします。この子が信頼する人だからこそ、私達は安心できます」

「頼まれましたと。責任持ってお預かりします」


二人に背を向けたまま外へ出ると、一人の男性と目が合った。


「俺は庭師の中村 涼といいます。お嬢様は?」

「まだ中だよ。お前だよな?手紙くれたの」

「ええ、そうですよ。お嬢様は必ず連れ戻します。俺の命をも懸けて…ね」


この童顔、絶えず笑顔だがその奥に強さがある。不気味だからニヤニヤ笑うな。


「させねえよ。環境が整うまで俺がお姫様を預かる」

「できればいいですけどね。フフッ」


中村は笑いながら庭の奥へ消えていった。何だったんだ一体。
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