デスゲーム
「どうした?急に帰りたくなくなった、とか?」

「いえ……て言ったら嘘になります。本当に……ありがとうございました」


手を握ったまま目をつむった雫。多分俺と同じ気持ちだろうな。言いたい事が何となく想像できてしまう。


「えへへ、何でだろう。また会えるのに、メールもできるのに、少しのお別れだけなのに寂しいよ。…変かな?」

「変じゃない。多分俺も同じだから」


優しく離すと真っ直ぐな瞳で俺を見つめてきた。決心はついた、もう大丈夫だという強い感情が伝わる。

ふと音に反応して駅を見ると電車が入っていくのが見えた。


「時間ねえぞ。急げ」


振り返らせて背を押してやる。


「ニャン♪」


白玉がくわえてたのは、俺がクレーンゲームでとったヒヨコのぬいぐるみ。さっき落としたのか。


「あの、ありがとうございました。白玉もありがとう。……では、行ってきます!!」


ぬいぐるみを手にして駅へと駆けていった。最後に見せた笑顔はこれまででも最高の笑顔だった。
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