デスゲーム
拓海君の表情が固まった。怖い。返事を聞きたくない。今ならまだ言い訳して回避できる。でもそうは…したくない。口が許してくれない。


「それ…優菜は知ってるのか?」


また優菜…。私を見てよ。私の声を…気持ちを聞いてよ。


「知らない。だからこうして二人きりの時にっ…」

「だったらこのまま黙っててくれ。今の日々を壊したくない。じゃあな」

「返事…は?」


無言で背中を向け、階段へ向かう拓海君。分かってるんだ。優菜に知られちゃマズイ事を。

それを承知で私は…答えを知りたい。私だって優菜と同じようになりたいから。


「………」

「はは、言えないよね。だって…だって拓海君は優菜と…付き合ってるんだから」


階段へ向かう足がピタッと止まった。いやだ、このまま引き下がったら私は弱いまま。強くなれない。


「どうしてそれを?」

「去年のクリスマス…見ちゃったから。ここで…ここで…ここで!!」


大嫌いな思い出が甦る。去年、この屋上での、二人の行動が。何度も忘れようとしたのに、深く、鮮明に。
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