デスゲーム
「ねえ、私は傷ついたよ?ひどい…心に深手を負って…まだ苦しめられなきゃいけないの?」

「くっ…」


ガチガチ揺れる右手はもう焦点を合わせられていない。涙を流して言う沙弥に怒りをぶつけられない。

こんなの…夢なら覚めてくれ。どうして沙弥にひどい事しなきゃならない?どうして……雫も。


「刺さないのね…優しい。けど私は雫と同じ痛みを味わなきゃ。

そうでもしないと隼人の怒りがおさまらないから。あなたの…ためよ」





ズシャッ……






一瞬の気の緩みをとられた。沙弥は俺の右手を強引に引っ張った。

俺の右手にはナイフ。吸い込まれるようにして……沙弥の胸に突き刺さった。


「これしか……隼人………許して…くれな」

「あ…ぁあ…」


赤が広がる。雫同様、沙弥の胸にも。その光景に沙弥から離れ距離をとると……

嫌な過去が甦った。





『痛く……な…よ』

『自分信じ……強く…』

「あ……あ…ぁあ…」


沙弥の死んだ港がくっきりと頭に浮かぶ。何もできなかった、無力な自分と共に。
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