デスゲーム
「無理……無理だよぉ。怖い。今更私が出てもまたレインに…」

「大丈夫。栞は強い心を持ってる。優菜さんも言ってたし、俺もそう思う。

あとは俺達二人がついてる。絶対にレインから守る。自分を…みんなを信じて……な」


もう時間がない。影はだいぶ侵食を広げ、足は動かせなくなった。

栞は、やっと俺の方へ向いてくれた。


「あなた影が…。…どうしてそこまで出来るの?こんな他人の私に」

「他人じゃねえ。記憶も名前も知ってる。そうだな…お前をとことん信じてるから」


いつか言われた雫の他人否定。理由なしでも信じてる、そう言いたかった。


「信じて…いいの?」

「もちろん」


栞は手をさしのべてきて……俺の手を掴んだ。

冷たいけど、どこか暖かい。そんな柔らかい手を離さないようにギュッと握った。

そして…栞もそれに答え、ギュッと、強く握り返した。






その瞬間鉄格子が消え、光が生まれ、暗闇が綺麗に晴れた。辺りにはまばゆい光が容赦なく広がった。
< 603 / 638 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop