デスゲーム

………


結局理由は分からずじまいで沙弥を家まで送った。

明日の食事の予定は伝えたから、後は別れるだけ。家の前で名残惜しそうに繋いでいた手を離す。


「今日は楽しかったよ。また明日ね。11時に白樺公園で。じゃあ、バイバッ…え!?」


俺は手を沙弥の肩におき、そっと握る。勢い良く掴んだからびっくりしたのかもしれない。でもいい。きっと今しか言えないから。


「隠し事してるのは分かってる。分かってるつもりだ。俺には沙弥が何かを背負ってるように見えるんだ。ただひたすらに。

俺を心の捌け口にしてもいい。愚痴なんていくらでも聞いてやる。

だから……だから笑顔だけは失わないでくれ。正直俺…笑顔の沙弥がいい。困ってる姿は見たくない」


スッと沙弥の瞳を見据える。ずっと言いたかった。福家の話で怯えていたから。もう俯いてる顔を見たくなかったから。


「…ずるいよ、こんなタイミングでそんなこと。一緒にいたくなるじゃない。

でもこれ以上私達の距離を縮めるなんてできない。…だけど大切にする!私の心と、あなたの気持ち」
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