デスゲーム
「急にごめんなさい。私にはもう時間がなくて…隼人の勇気を少しだけ分けて欲しい…」

「…分かった。目、そのまま瞑ってろよ」

「うん。待ってる」


夕日のせいかどうかは分からないが、顔が火照ってゆく。そっと肩に手を置きこっちも目を瞑る。

さっきもだけど、俺って沙弥のこと...。

そしてゆっくりと、唇が数センチと距離を縮めた時………


「ちょっとあんたら、人ん家の前でそこまでやる?恥ずかしいからやめろ」


意表を突いた声に俊敏に反応し、瞼と顔を上げて人物を確かめる。あ…あいつは。

沙弥も俺が直視してからコンマ数秒後に振り返る。

カチンッ。その人物を見た瞬間に石と化した。完全に身体機能が停止している。


「俊介……だったっけ?またいいタイミングで来るのな」

「は?始めからいましたよ。庭の花壇に水やりしてたら姉貴達が帰ってきて。

玄関から出たもんだから裏口閉まってるっしょ?で、戻ると俺の存在に気付いちまうから、そのまま隠れて今現在。期待以上の面白さだったよ?」


放心状態の沙弥の肩を両手で包み、俺へともたれるかかせる。

沙弥は「あがっ、あがっ」と声にならない呻き声を出して俊介を指差していた。
< 87 / 638 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop