春待 〜fall〜
ちぃは、基本的に執着心が薄い。
必要以上に友達とつるむこともなければ、日常の出来事についてべらべらと話すこともない。
何事にも無関心に見える。
でも、冷たいわけじゃない。
感情を隠すわけでもない。

ただ、いつも静かなだけ。

見ていればわかる。
いつも静かに何かを愛し、喜び、嫌い、泣いている。

そして、とても優しい。


よく見ていなければ、気まぐれともとれる彼女のふるまいが、俺には、とても愛しい。


そして、どんなに親しくなっても、名前だけは呼ばせない。
彼女の中の踏み込めない場所への憧れに、余計に焦がれてしまうのかもしれない。

「あたしの名前はありふれた名前だけど、好きな人にだけ呼んでもらったら特別になるでしょ?」


彼女が、何よりも執着し、
彼女を、何よりも可愛くさせる。


どうしてそれは、俺じゃないんだろう。

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