ブラッディ・ロマンス。【短編】
あたしはびっくりして、教室を見回した。
「ふぇ……ひっく」と言葉にならない声とぐずる鼻の音。
朝っぱらから泣き声なんて、今までに経験がなくて、教室を間違えた気分になってしまう。
あたしはすぐに、声の発生源を見つけた。
「…柏木(カシワギ)さん?」
あたしは思わず、眉を寄せた。
前から2番目の窓側に座る柏木さんが女子に囲まれ、その中央で顔を伏せて泣いている。
なんとなく、柏木さんが泣くなんて意外だった。
学校で我慢できずに泣くと言えば、イジメや失恋。
でも、どっちも無縁そうな女の子なんだ。