ブラッディ・ロマンス。【短編】
全校生徒と教師がこの体育館に集まっているんだから、
見失ってもおかしくない。
それなのに、どうしてか胸騒ぎがして、落ち着かない。
どうしよう…。
神藤くん。
あたしは里枝に「ごめん」とひと声かけ、
楽しそうにしている人の波の中を縫うように速足で歩いた。
――いない。
いない、いない、いない!
焦りまで感じ、体育館にはいないのかもしれない、と飛び出した。
誰もいない静まり返った廊下に、あたしの足音だけが響く。
導かれるように、まっすぐ教室に向かって走っていた。
「神藤くん…!」